さらに深刻な問題点は(私もかなり苦しんだ)とにかく大袈裟に口の形を作り練習することが、後々ネックになってしまった生徒さんがたくさんいたことだ。
確かに今までにない音を作るのだから、大袈裟に口の形を作ることは大切だと思う。
ただ、それまでのレッスンはあまりにも口の形ばかりに固執していた。
とにかく、口の形を重視したため、いざナチュラルに話そうとすると、その大きな口の形がそう簡単に崩れない。
崩れないから、スピードをつけて話せなかったのだ。
「もうそんなに大きく作らなくてもいいですよ」と急に言われても、今まで形が大切だと思い込んで練習してきたのだから、口のまわりの筋肉が記憶していて簡単に崩せるわけがない。
私自身、普通の口の大きさで話せるようになるまでかなり時間を要した。
かといって、最初から口の形を作らず、音だけに頼って発声するのは困難だと思う。
口の形は重視しつつ、英語の音を作りだし、そしてナチュラルに口・舌を動かせる最適な方法はないだろうか?
これが第3のポイントだ。
また、私が生徒だったころと同じ現象、症状で、口の形はすごくきれいなのに、なぜか英語の音にはならない・・・
なぜ?という生徒さんも多くいらっしゃった。
一番大切なことは、口の形・舌の位置ではなく、もっと別にあるのではないか?それは、やはり息の使い方、呼吸の問題なのではないか?
前述したように、ロスの学校で発音講師をしていた同僚(もと生徒)は、誰が聞いてもきれいな英語の音だった。
歌が得意で、もともと声量のあった彼女にとって、英語の音を作りあげるのはたやすいことだった。
反面、歌は音痴、真似は下手な私にとって、「違いは呼吸だ!」と思ってもその呼吸を自分のものにするには大変な時間がかかった。
それから自分ではちょっと感覚がつかめて来たものの、それをどう生徒さんに伝えるか、に時間がかかった。
よく言われるのが「英語は腹式呼吸」という話だが、腹式呼吸の練習をしても、無理矢理お腹をへこませたり、無理矢理低く発声しようとする生徒さんがいたり、有効的な方法はなかなか見つからなかった。
いかに音のエネルギーとなる呼吸を、身体で覚えていけるか。これが第4のポイントだ。
また、習った発音はきれいなのに、英会話には結びつかないという生徒さんもいらっしゃった。
なぜ?という理由はたくさんあるのだろうが、当時のそのテキストは、発音重視で作られていた。
なので、語彙や表現を身につけたり・・・といったインプットは別に勉強してください、というスタンス。
もともと英語はしゃべれますと言って来ている生徒さんにはいいテキストだったのではないかと思う。
自分の英語力に、学んだ発音をあわせて行けばいいのだから。
しかし、生徒さんの中には、発音はきれいなのに、英会話になると言葉に詰まって会話にならない、単語を知らない、文法を考えてしまって発音どころではなくなってしまう、という声が多くあった。
英語力が全くの初心者から上級者までどのような状態でも、本当に生徒さんが身に付けられ、有効である発音習得方法、そして、英会話を自然に習得できる方法。
これが第5のポイントだ。
これらの1.発音記号と結びつかない 2.イントネーションの壁 3.口の形を小さく、又はくずせないこと 4.口の形、舌の位置は間違っていないのに、英語の音にならないこと 5.発音はきれいなのに英会話になかなか結びつかない、といった大きな問題点の打開策をふまえて新しいテキスト作成にあたった。 1999年11月のことだ。
まずは、とにかく会話ですぐ使うような文章をきれいに発音練習し、実践に入っていくことが一番だと考えた。
ビジネス会話、旅行会話、日常でよく使われるフレーズ・・・など生徒さんがよく使うであろう文章を、できるだけ多く練習できるようなテキスト作りを心がけた。
その準備として、すぐに使える表現、単語を 2万以上挙げ、頻度を分析し、そこから音にフォーカスした文章、単語の振り分け作業にかかった。
気が遠くなるような作業。
レッスンに入りながら時間を見つけての作業だったので、かなり月日を要した。
表現・単語が集まった後はテキストの構成にかかった。
ここで、テキストのレイアウトをお願いしたデザイナーの方にこちらの意図が伝わらず色々な問題が生じたものだった。
なにしろ普通の英語の教材と違って、とても特殊なテキストなので、私たちの意図がなかなか伝わらなかったのだ。
そしてテキスト作成途中、お腹の中には長女。妊娠8ヶ月ごろ、早産になりそうで入院してしまった。
・・・しかし、休んでいる暇はない。入院中もテキスト作成づくりに専念した。看護婦さんが呆れていた。
結局、初めてのテキスト試作版はできあがるまでに1年半かかった。
そして、初めてだったので、生徒さんの反応、反響がすごく怖かった。
当時、「この試作版が最後で、テキストという教材など作れなくなるかな。」と思っていたが、なんと予想とは裏腹で大好評でした。
試作版なので外部販売はなしに、通学生徒さんのみに提供して、英会話に必要な単語、文章を選び出したもの。
作成はとても大変だったが評判がよかったので、この内容をもとにしてハミング8メソッドを盛り込んで、ハミング発音スクールのオリジナリティの高い教材作成にすぐにとりかかった。
そして、出来上がったテキストとDVDは、前述の5つの問題点を大筋カバーできたものに仕上がった。
(ハミング8メソッドの誕生秘話はまた後述します。)